お茶(緑茶)の成分と効果・効能

渋み、苦み、旨みなどの独特な味わいをもつ緑茶には、 人間の健康によい影響を与えるとされる成分が多く含まれており、 実に多様な効果・効能があります。


■■■カテキンとは

カテキンは、ポリフェノールの一種で、昔からタンニンと呼ばれてきた緑茶の渋みの主成分です。カテキンの語源は、インド産のアカシア・カテキュー(マメ科アカシア属の低木)の樹液から採れる“カテキュー”に由来しています。 お茶のカテキンは、1929年、理化学研究所の辻村博士らによって初めて存在が確認されました。茶葉中に形の違う4種類のカテキンが存在しています。

  • エピカテキン
  • エピガロカテキン
  • エピカテキンガレート
  • エピガロカテキンガレート

また、お茶飲料を製造する工程の中で、加熱処理を行うことで一部形が変化します。

  • エピカテキン⇒カテキン
  • エピガロカテキン⇒ガロカテキン
  • エピカテキンガレート⇒カテキンガレート
  • エピガロカテキンガレート⇒ガロカテキンガレート

カテキンは非常に酸化しやすい物質です。緑茶は、荒茶製造工程中で酸化酵素の働きが抑えられるため、ほとんど酸化しません。しかし、烏龍茶や紅茶では、酸化酵素の作用で酸化重合物(いわゆる合体カテキンで、テアフラビン類・テアルビジン類が該当)が作られます。すると、本来は水溶液中では無色のカテキンが、オレンジから赤色となります。烏龍茶や紅茶が赤っぽい色をしているのは、このためです。

お茶の成長や場所によって成分の含有量が違う

カテキンは、一番茶で約12~14%、二番茶で約14~15%と増加します。また、成熟した葉(3~4枚目)よりも若い芽(1~2枚目)に多く含まれています。玉露のように光が当たらないよう被覆栽培されるものは、カテキンの生成が抑えられ、煎茶よりも少なくなります(ポリフェノールとして10%程度)。
テアニンは茶樹の根で作られ、葉の方に移っていきます。また、テアニンは光が当たると分解してエチルアミンをつくり、エチルアミンがカテキンに変化します。光が当たらないとテアニンは分解されないので、被覆栽培するとテアニン含有量が高くカテキンの生成が抑えられたお茶ができるのです。


カフェインとは

カフェインは、お茶の苦みに寄与しています。茶葉の中のカフェインは、一番茶・二番茶といった茶期によって大差はありませんが、カテキンやアミノ酸(テアニンなど)と同様に、若い芽に多く含まれ、成熟した芽では少なくなるので、若い芽を摘んでつくられる抹茶や玉露は、カフェインの含有量は高くなります。

カフェイン量 (100g当たり) 浸出法
玉露 160mg 茶10gを60度の湯60mlで2分30秒浸出
煎茶 20mg 茶10gを90度の湯430mlで1分浸出
ほうじ茶 20mg 茶15gを90度の湯650mlで30秒浸出
玄米茶 10mg 茶15gを90度の湯650mlで30秒浸出
紅茶 30mg 茶5gを熱湯360mlで1分30秒~4分浸出
ウーロン茶 20mg 茶15gを90度の湯650mlで30秒浸出

出典:日本食品標準成分表 2015年版(七訂)

保健効果

カフェインの主な作用として、覚醒作用・利尿作用などが挙げられます。
カフェインは、脳の中枢神経に興奮的に作用(覚醒作用)するため、眠気を防いで知的作業能力を向上させたり運動能力を向上させたりする効果があります。また、カフェインを摂取して適度な運動を行うと、筋肉中の栄養源(ブドウ糖=グリコーゲン)よりも先に、脂肪をエネルギー源として利用する現象がみられ、持久力の向上に役立ちます。さらに、お茶は二日酔いにも効果があるといわれますが、これもカフェインの働きによってアルコールの代謝が高められるためです。
また、歴史的にみて人類がお茶を嗜好飲料として飲むようになったのは、カフェインの作用によって気分が爽快になるためだと考えられています。


アミノ酸(テアニン)とは

アミノ酸はお茶の旨みに寄与する成分で、お茶に含まれるアミノ酸の半分以上がテアニンです。茶葉に含まれるアミノ酸は、他にもグルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、セリンなどがあり、お茶の旨みにはこれらのアミノ酸に加えて、有機酸やポリフェノールなど複数の成分が総合的に寄与していると考えられます。

茶期などによる含有量の違い

テアニンはお茶に特有のアミノ酸であり、近縁種のツバキやサザンカには含まれていません。
二番茶よりも一番茶、一番茶でも初期の若い芽に多く含まれ、成熟した芽では極端に減ります。
また、玉露のように被覆して(日光を当てない)栽培すると、アミノ酸からカテキンへの生成が抑えられるため、茶葉中にテアニンを豊富に含んだままの状態となります。このため、新茶や玉露は旨みの多い味わいに、番茶はあっさりした味わいになります。

保健作用

お茶の浸出液のカフェイン濃度は約0.01~0.02%で、お茶を1杯飲むと15~30mgのカフェインを摂ることになります。この量のカフェインですと、かなり強い興奮作用を示すはずなのですが、実際には穏やかな興奮作用でとどまります。これは、テアニンにカフェイン興奮抑制作用があるためで、劇的な作用を適度な作用に変えるあたりは、お茶がもつ天然・自然の妙といえるでしょう。
テアニンが脳の神経細胞を保護する働きをもつことは、細胞実験を行った結果、明らかになりました。また、テアニンを飲んだ場合の人間の脳波を測定すると、リラックスしている状態のときに多く出現するα波が上昇することも判明しています(伊藤園の中央研究所の調査による)。

成分の組み合わせの効果
(カフェイン・テアニン・アルギニン)

緑茶には、カフェインの作用(脂肪をエネルギー源にする)によって、運動能力(持久力)の向上に効果があると考えられています。一方、運動時には老廃物であるアンモニアが高まることから、アンモニアの代謝を促進するアルギニン、さらにはリラックス作用のあるテアニンを組み合わせることによって、効率的に疲労を軽減すると推測されています。
これらの成分の組み合わせを検討した結果、カフェイン:テアニン:アルギニンの比率は、1:2:2が好ましいという結論が導き出されました(伊藤園の中央研究所の調査による)。
さらに、人間に室内ランニング装置を用いて運動負荷(トレッドミル走)をかけたときの被験者の疲労度をスコア化した結果、カフェイン・テアニン・アルギニンを含んだ飲料を摂取した場合、運動開始時からの疲労度の低下効果が認められました。 テアニン同様、高級茶にはアルギニンが多く含まれていますが、お茶成分の組み合わせによる効果は非常に興味深い分野で、さらなる研究が続けられています。


ビタミンとは

ビタミンを含め、糖質・脂質・タンパク質・ミネラルを五大栄養素と呼びますが、ビタミンは必須栄養素であり、人間の体内でつくりだすことができないので、食べものなどから摂らなければなりません。
ビタミンには13種類あり、水に溶ける水溶性ビタミンと、油にしか溶けない脂溶性ビタミンに分類されます。この13種類のうち1種類でも欠けていると肌荒れ・手足のしびれ・だるさ・疲労などに直結してしまいます。
緑茶には、ほかの食品と比較してもたくさんのビタミンが含まれ、含有量も多いことで知られています。この点だけをみても、お茶が優れた飲料であることがわかります。なお、烏龍茶や紅茶にはビタミンが含まれていないものも多く、ビタミンCなどは製造工程の途中でほとんどなくなってしまいます。

保健作用とほかの食品との含有量の比較

ビタミンC

ビタミンCは、コラーゲンの生成過程で必要な栄養素です。そのためビタミンCが欠乏すると、コラーゲン繊維の形成が損なわれ、血管壁が脆弱化し、壊血病が起こります。また、ビタミンCは抗酸化作用をもつため、がんをはじめとする生活習慣病の予防に重要な働きがあると考えられています。
ビタミンCは、お茶の中でも煎茶にもっとも多く含まれ、その量は野菜の中でも含有量の多い赤ピーマンの約1.5倍に相当します。一方、烏龍茶のビタミンC含有量はごくわずかであり、紅茶にはまったく含まれていません。

サポニンとは

サポニンはお茶全般に含まれている成分で、抹茶などでみられるように泡立つという特徴があります。茶葉に0.1%程度含まれ、強い苦みとエグみをもっています。
サポニンには、抗菌・抗ウイルス作用などの有効性が確認されています。

フッ素

フッ素はツバキ科の植物に多く、一般的に若芽よりも成長した葉に多く、また番茶にもっとも多く含まれます。歯の表面に耐酸性の被膜を形成するので、虫歯の予防に有効な成分です。

ミネラル(カリウム、カルシウム、リン、マンガンなど)

ミネラルは、生体調節に重要な役割をもっています。お茶には5~7%ほど含まれており、その主体はカリウム(K)・カルシウム(Ca)・リン(P)・マグネシウム(Mg)ですが、マンガン(Mn)・亜鉛(Zn)・銅(Cu)も微量ながら含まれています。

クロロフィル(葉緑素)

クロロフィルは植物の緑の色素成分であり、光合成を行ううえで重要な役割を果たします。光をさえぎって被覆栽培される玉露やかぶせ茶では、少ない光量をより効果的に吸収しようとしてクロロフィルが大量に生成されます。そのため、玉露やかぶせ茶は、深く濃い緑色になります。クロロフィルには消臭効果もあることから、チューインガムなどに利用されています。

香り成分

お茶の香り成分の種類は極めて多く、緑茶で200種類、紅茶や烏龍茶を含めると600種類以上にもおよびます。しかし、量的には微量で、精油(せいゆ)と呼ばれる香気物質の量は緑茶で約0.005%、紅茶で0.02%程度です。

本来、生葉には香りが少ないですが、摘採と同時に酵素が働くことによって茶葉成分が分解されて香りの成分が生成されます。ただし、緑茶の場合は、摘採後すぐに発酵を止める特性があるため、香り成分の生成は少なく、しかも荒茶製造工程中に香り成分の多くが揮散するため、極めて繊細な香りとなります。
お茶の香りが良くなるのは、火入れ加工によるもので、加熱することでアミノ酸と糖類が反応して、火香(ひか)という香ばしい香りが生成されます。

ほうじ茶の場合、焙煎過程で火香である加熱香気成分が多く生成され、香ばしい風味となります。烏龍茶や紅茶では、摘採後の発酵過程で香りの成分が形成されます。鉄観音の果実のような芳香、さらにダージリン紅茶のマスカットフレーバー、高級紅茶にみられるバラの花や果実のような甘い芳香など、すべて発酵過程で形成されるものです。このような発酵茶に特有な芳香は、高い温度で揮散します。烏龍茶や紅茶をおいしく楽しむ際に必ず熱湯を用いるのはこのためです。